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最高裁判所第三小法廷 昭和26年(れ)1087号 判決

本籍

東京都墨田区吾嬬町東一丁目一五番地

住居

同都同区同町四丁目一六番地 荒木佐助方

人夫

小林国吾

大正一四年一月一四日生

本籍

東京都墨田区向島隅田町三丁目一〇六〇番地

住居

同都同区吾嬬町西八丁目三六番地 高橋七五三二郎方

人夫

高橋鉄雄

大正三年一月一九日生

右小林国吾に対する殺人未遂、高橋鉄雄に対する銃砲等所持禁止令違反、住居侵入被告事件について昭和二五年一〇月四日東京高等裁判所の言渡した判決に対し、各被告人から上告の申立があつたので当裁判所は刑訴施行法第二条に則り次のとおり判決する。

主文

本件各上告を棄却する。

理由

被告人両名の弁護人松本重夫同常盤敏太の上告趣意中被告人小林国吾のための上告趣意について。

被告人小林国吾に殺意のあつたことは、原判決が証拠に挙示する同人に対する検事の聴取書並びに第一審第二回公判調書中の証人大島宮栄の供述記載によつて認めるに充分である。そしてまた、証拠調の限度を如何に決めるかは、原審の自由裁量に委ねられているのであるから、原審が大島宮栄外二名を証人として喚問しなかつたとしても違法ではない。されば、殺意の有無につき審理不尽の違法があるとの所論は、結局原審の採用しない証拠を論拠として原審が適法になした証拠の取捨並びに証拠調の限度を非難するに帰するので採用できない。また、「論旨摘録にかゝる原審公判廷における被告人小林国吾の供述によれば、同人が犯行の半ばに大島宮栄方を逃げだしたのは、大島の女房に騒がれたためか、大島本人が抵抗したためか、或は同人が抵抗しなくなつたことから被告人が恐ろしくなつたためであるか、何れとも認め得られるのであるが、いずれにしても本件の場合が障礙未遂であつて中止未遂でないことは疑ない。」そして、原判決挙示の証拠により原判決のような障礙未遂の事実を認定し得られないわけではないから、原判決には所論のように審理不尽若しくは理由齟齬の違法はない。

前記弁護人両名の被告人高橋鉄雄のための上告趣意について。

被告人高橋鉄雄は、原審公判廷において原判示と同趣旨の供述をしているのであり、同人の供述によれば同人及び大島宮栄は一棟二戸の小屋のうち各一戸に居住していたことが明らかなので、被害者大島宮栄の住んでいた家は刑法一三〇条の「人の住居」に当たるものと言わなければならない。論旨引用の判例は、本件と異なる状況に関するものであつて本件に適切でない。なお、本件住居侵入の不法であることは、被告人高橋鉄雄が原判示と同趣旨の供述をしていることからも認め得られる。されば、原判決には所論のような違法はない。

よつて、本件上告を理由ないものと認め、旧刑訴四四六条に従い裁判官全員の一致した意見により主文のとおり判決する。

検察官 田中巳代治関与

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上登 裁判官 島保)

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